高級和牛の代名詞ともなっている松坂牛

神戸、近江の牛とともに「和牛三大ブランド」に数えられ、高級和牛の代名詞ともなっている松坂牛。肉質の柔らかさと風味で、山海の珍味に恵まれた三重県内の産物の中でも抜群の知名度を誇る。地方都市・松坂の名を全国に広めてきたのは、このブランド肉だといっても過言ではないはずだ。飯南町の農家では、毎日、自宅わきに建つ牛舎で、牛たちに声をかける。ここの方は、松坂肉牛共進会で最優秀の優秀賞一席に三回選ばれたキャリアを持つ、この地きっての肥育農家なのだそう。飯南町は、松坂市内から西へ車で三十分ほど。松坂牛の産地の一つとして名高い。「松坂牛発祥地」の碑が誇らしげに立っている。農耕牛を食肉牛に改良した記念碑だ。天気の良い日には、木のさくを外し、牛たちを散歩に連れ出すそうだ。そんな農家で育てられた松坂牛は、最近、結婚式や納会の2次会で景品として使われる事が多いとの事。

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「東の横綱」は前沢牛

松坂牛が「西の横綱」と呼ばれるとき、「東の横綱」は前沢牛だといわれる。新幹線を乗り継いで松坂市から六時間、産地である岩手県の南部、胆沢郡前沢町を訪ねた。町は人口約一万五千人。この平野部を中心に農家が黒毛和種二千六百頭を肥育し、格付けでA4以上の雌と去勢を「前沢牛」と呼ぶ。出荷先のほとんどが東京だ。ブランドの名が高まったのは、わずか十年余り前から。全国肉用牛枝肉共進会での最優秀賞受賞を皮切りに、全国規模の枝肉コンクールで四年連続計六回のチャンピオンに輝き、名が広まった。同時に、多頭肥育に挑む農家も増え、一戸当たり最多で百四十頭を育てている。だが、「下積み時代」の苦労がなかったわけではない。昭和四十四年に初めて東京食肉市場へ送り出し九百八十頭は、「岩手のガリ牛」呼ばわりされた。やせ牛だと酷評されたのだ。その後、肥育農家の育成のための「前沢牛同志会」などの組織が生まれ、肥育技術の研究が続いた。